先日の米国シカゴで行われた癌学会ASCO(2019/5/31-6/4)での発表からの引用です。

HER2陽性乳癌の術前術後治療にT-DM1(カドサイラ)を用いることで従来の抗癌剤投与を避けることができるのではないかという話ですが、結論から言うと、実現からはまだ遠そうです。おそらくT-DM1のみでも良い群はあると思われますが、まだどのような場合にT-DM1のみでよいか同定できないのが現状です。

ちなみに日本ではT-DM1は手術不能または再発乳癌のみ保険収載されており、現在術前術後の補助療法としては使えません。

以下、KRISTINE TrialとPREDIX HER2 Trialの報告の引用です。ASCO Daily newsからの私のつたない翻訳で読みづらくてすみません。

KRISTINE Trial

KRISTINE Trialという第3相ランダム化臨床試験では、444人のHER2陽性ステージ2-3の患者さんを術前6コースのT-DM1+Pertuzumab(パージェタ)(T-DM1+P) vs TCH(ドセタキセル+カルボプラチン+ハーセプチン)+Pを3週毎投与。術後T-DM1+P継続またはTCH+P群はハーセプチン+パージェタ。50人はT-DM1+P群で術後T-DM1+Pの前に標準補助化学療法を受けた。

2018年に報告されたように、TCH-P群の方がT-DM1+P群よりも高い病理学的完全奏効率(56% vs. 44%, p = 0.0155)であった。術前治療中、T-DM1+P群の方がTCH+P群よりもGrade3以上の副作用が少なく(13% vs. 64%)、重篤な副作用が少なかった (5% vs. 29%).。加えて、T-DM1+P群の方が副作用による治療中断が少なかった (3% vs. 9%)。

KRISTINE Trialは2次的エンドポイントは中央値36カ月のフォローアップでの無再発生存(EFS)、浸潤癌無再発生存(iDFS)、全生存率(OS)、安全性、QOLである。

中央値36か月のフォローアップで、無再発生存率はTCH+P群で94.2%、T-DM1+P群で85.3% (HR 2.61, 95% CI [1.36, 4.98])であった。これはT-DM1+P群で局所進行例が多く (15 vs. 0 in the TCH+P group),浸潤癌無再発生存が悪かったことに起因しているとDr. Hurvitsが言った。

T-DM1群では全体では重篤な副作用またはグレード3以上の副作用がTCH+P群に比べ少なかった(重篤な副作用13.5% vs. 32.4% 、グレード3以上の副作用31.8% vs. 67.6%)。しかしながら、術後補助療法の期間では、T-DM1+P群では重篤な副作用(6.6% vs. 4.7%)、グレード3以上の副作用(24.5% vs. 9.9%)が高率であった。

死亡数はTCH+P群では5人(2.3%)、 T-DM1+P群では6人 (2.7%) であった。

3年での浸潤癌無再発生存率が同等であったことは、幾人かの患者では化学療法が必要ないかもしれない。しかし、化学療法をしなくて良い患者を同定するのは重大な事項であると彼女は言った。

 

PREDIX HER2 Trial

ランダム化第2相試験PREDIX HER2 Trialでは、術前治療での抗癌剤治療の軽減が可能かを決定するためにデザインされている。

202人の腫瘍径が20mmを超えるまたは/かつリンパ節転移陽性のHER2陽性原発性乳癌女性(うち62.8%がホルモン受容体陽性)が6コースのドセタキセル、トラスツズマブ、ペルツズマブ(DTP)またはT-DM1。

プロトコールでは、治療に反応しないまたは腫瘤増大した場合にはスイッチすることを許可している。DTP群は、74人が治療を完遂し、18人が副作用のためT-DM1にスイッチした。T-DM1群では、85人が完遂し、9人がDTPにスイッチした。全体ではDTP群の99人とT-DM1群の98人が手術を受けた。

ホルモン感受性や腫瘍径を無視した場合には2群でのpCR率には有意差がないが、ホルモン受容体陰性の場合にはpCR率が高かった(DTP群67%、T-DM1群59%。両群ともホルモン陽性では36%に対して)。